風飡水宿・その弐
本格的なキャンプをしてみよう!
ソロBBQで野外料理に慣れ親しみ、野外活動センターで焚火をする事に慣れてきたら、キャンプ場で本格的なキャンプ(テント泊)をしてみましょう。しかし、テント泊をするには多数のキャンプ・ギアが必要になりますし、必要最小限のギアを購入するだけでも結構な額のお金が飛んでいきます。
キャンプ系のサイトやブログを見てみると、主にSNS映えを意識したガレージ・ブランド製のギアを紹介しています。確かにそういうギアはカッコイイのですが、大量生産が出来ないので基本的に高額です。
売る方はそれで良いかも知れませんが、キャンプの基礎知識が無い状態だと、何が何だか良く分からない状態で高額商品を買う事になってしまいますし、後になって「このギアは自分のスタイルには合っていなかった」という事にもなりかねません。
その点、当サイトは防災の視点で必要最小限のギアを紹介しているので、流行り廃りやスタイルなどに左右されません。パリピなグランピング系や、武骨なミリタリー系、またはブッシュクラフト系のスタイルに興味がある方は、他のサイトや本などを参考にしてください。
防災に関しては別カテゴリで専門記事を書いていますので、そちらをお読みください。
移動手段
どのようなキャンプのスタイルであっても、まず自動車を所有しているか否かという大きな分岐点があります。自動車があれば大型のギアや大量の薪を持ち運べますが、バイクや自転車しか無い場合は持って行けるギアの種類や数が大幅に制限されてしまいます。
管理人は元バイク乗りの「ツーリング・キャンパー」でしたが、その時に持っていたギアと言えば、ソロ用のテントと寝袋とエアマット、それと兵式飯盒にガスバーナーくらいのものでした。当時は地方への旅や峠を攻める為にテント泊をしていただけなので、この程度のギアでも良かったのです。
京都の笠置キャンプ場のように、電車やバスなどの公共交通機関の駅が近くにある場所でキャンプをするなら「徒歩キャンプ」というスタイルも可能ですが、その場合もギアは必要最小限しか持っていけません。
必要最小限のギア
・テント
・グランドシート
・寝袋(シュラフ)
・マットレス
・ランタンなどの光源
テント
最初に購入するテントは、ツーリング系の自立型ソロテントがお勧めです。軽さだけなら登山用の自立型ソロテントの方が上なのですが、庇(ひさし・キャノピー)が無いなど性能面に難があります。
キャノピーが無いテントは、雨が降ると焚火やガスで料理をする事も出来なくなるので、天幕(タープ)を張らなければいけません。しかし、キャンプの初心者がタープを張るのは難しいので、キャノピー付きのソロテントを購入した方が良いのです。
キャノピー付きのソロテントにも色々あるのですが、当サイトとしてはColeman社のツーリングドームをお勧めします。このテントは遮光性が極めて高いので、朝日が眩しくて目が覚めるという事はありません。また、網が付いた大きな窓があるので風通しが良く、夏の夜でも涼しく過ごせます。
ミリタリー好きの人は軍幕テント(パップテント)を選ぶ傾向があります。軍用のパップテントは酷い性能だと聞いていますが、最近は難燃性の布地製で、空間を広く使える二又ポール、冬の冷気を遮断するスカートと呼ばれるパーツまでついた素晴らしい製品が出ています。
グランドシート
風飡水宿・その壱で紹介した「三種の神器」の一つ、オールウェザー・ブランケットをお忘れなく。高額商品であるテントの床を保護したり、床が無いパップテントを使用する時に必須のギアです。キャンプの撤収時には作業場にもなります。
寝袋(シュラフ)
シュラフの形にはマミー型と封筒型の二つがあるのですが、最初に購入するシュラフは安価で寝心地の良い封筒型が良いでしょう。シュラフには快適温度と最低温度の二つが表記されているものと、スリーシーズン用とだけ表記されているものがあります。
軽量かつコンパクトな羽毛シュラフは人気がありますが、メンテナンスが難しくコスパが悪いという欠点があります。化繊のシュラフはコンパクトではないものの、安価で手を出し易く、洗濯機での丸洗いや、手揉み洗いが出来るものもあるという長所があります。
真冬にキャンプをするのであれば快適温度0℃、最低温度-10℃前後のシュラフが欲しくなりますが、初心者に冬のキャンプは厳しいので快適温度5℃くらいのもので良いでしょう。真冬の雪山等でキャンプをするのでない限り、ハイスペックな羽毛製マミー型シュラフを購入する必要はありません。
真冬のキャンプはギアを揃えるまでが大変ですが、虫に悩まされる事はまずありませんし、焚火の温もりや星空を楽しむのにも良い季節です。実際にキャンプに慣れてくると、どうしても冬用のシュラフが欲しくなってきます。
人気があるのはNANGAやISUKAといった、国産メーカーの羽毛製マミー型シュラフです。高額商品なのでなかなか手が出ませんが、品質やサービスは最高クラスで非の打ち所がありません。キャンプの初心者が購入がするような商品ではありませんが、メーカー名を知っておいて損は無いでしょう。
因みに、管理人が冬用シュラフに要求するスペックは、封筒型で、安価で、丸洗いOKで、最低温度が-15℃という欲張りなものですが、下記リンク先のシュラフは見事にその要求に応えてくれました。
マットレス
これも風飡水宿・その壱で紹介しましたが、テント泊をするなら折り畳み式のサーマレスト社製マットレス(通称パタパタマット)は欠かせません。何故なら、キャンプ地の地面には凹凸がある為、基本的に寝心地が悪いからです。
寝心地が悪いと睡眠が浅くなりますし、その体験を何度も重ねていくと次第にキャンプが嫌いになっていきます。逆に、野外という条件の悪い所で熟睡出来るようになると、「自分は何処でも生きていける、何処にでも行ける」という自信が身に付きます。
パタパタマットではなく、エア・マットレスでも良いのですが、エアマットは素材的に滑りますし、穴が空いたら使い物になりません。パタパタマットとエア・マットの二重床にするという手もありますが、初心者がそこまでしないと眠れない環境下でキャンプをする必要があるのでしょうか。
ランタンなどの光源
光源関連のギアはキャンプの雰囲気を大きく左右します。特にオイルランタンは非日常を演出してくれるので、多くのキャンパー達は必須のギアと考えています。
最近のキャンプ人気で、安価な国産オイルランタンが容易に手に入るようになりましたが、その原点はFEUERHAND(フュアーハンド)社のハリケーンランタンにあります。「激しい風雨の中でも火が消えない」という事からその名がついただけあって、とてもタフな作りになっています。
ただ、LEDランタンと比べると、オイルランタンは扱いが面倒です。たまに倒してオイルが零れる事もあるので、収納容器の事も考えなければいけません。
個人的には、キャンプにおける光源の最小単位はLEDヘッドライトと、ティーライトキャンドルだと思っています。どちらも100均やホームセンターで購入する事が出来ますが、ティーライトキャンドルを裸火のまま使用するのは危険なので、小型のキャンドルランタンと併せて使いましょう。
スタイルによっては必要になるギア
・大型のリュックサック
・キャンプ用の椅子
・綿100%の軍手
・焚火台
・焚火シート
・薪割り用のナイフ、鉈、斧
・炭バサミ
・火吹き棒(ファイア・ブラスター)
・綿100%の軍手
・クッカー(調理器具)
・ウォータージャグ
大型のリュックサック
自動車があれば大型のギアでも余裕で持ち運べますが、バイクや自転車または徒歩の場合は大きめのリュックサックが必要です。キャンプ用だと容量が40ℓでは少々キツイので、出来れば60ℓは欲しい所です。大型リュックは小型ギアの収納場所にしたり、防災用の非常持ち出し袋にすれば無駄がありません。
お勧めのリュックサックというのは特に無いのですが、軍用アリスパックのように小分け出来るものや、外側にリードがついていてカラビナ等で色々下げられるものの方が良いかも知れません。
個人的にはグレゴリー社やオスプレー社のバックパックが好きなのですが、毎年モデルチェンジするので「これだ!」と思ったもの見つけた時に購入するべきだと思います。
キャンプ用の椅子
椅子は自分の目指すキャンプ・スタイルや、焚火台などの他のギアとの相性によって、ベストの選択が変わってきます。有名なのはヘリノックス社の製品ですが、それが必ずしもベストとはならないのが椅子選びの難しい所です。
極論すると、椅子が無くてもキャンプは出来ます。でも、坐り心地の良い椅子があれば長時間の作業も苦になりませんし、何より夜空の星を眺めつつ焚火をのんびり楽しむ事が出来ます。そしてそれは、何物にも代えがたい素晴らしい体験になるでしょう。
椅子は確かに重要なギアなのですが、キャンプ初心者のうちは買え控えをして、ある程度まで自分のスタイルが固まってきた頃に購入する方が良いかも知れません。因みに、管理人は散々悩んで探し回った挙句、京都のロゴスランドで下記リンク先のタイプの椅子を購入しました。
焚火台
今は直火OKのキャンプ場は殆ど無いので、焚火をするなら必ず焚火台を購入してください。値段と使い勝手を考えるなら、DOKICAMPの焚火台がお勧めです。ただし、この製品は有名なピコグリルという焚火台の模倣品です。
本物のピコグリルは、一万円を超える高額商品です。模倣品やインスパイア商品が大量に出回っている今となっては、この値段で買う人は殆ど居ないでしょうね・・・。
因みに、管理人が愛用している焚火台は2つあり、一つはユニフレーム社のファイアグリルです。複数人用の大きな焚火台なので、大抵の薪は割らずにそのまま火にくべられます。私はこれをメインの焚火台にしています。
もう一つはZEN Camps社のネイチャー・ストーブです。チタン製の焚火台で4000円という製品は他に見た事が無いですし、小型なのにタフで何十回でも使えます。細い薪しか使えないので、トライポットが無いと使い難いという欠点はありますが、個人的にはイチオシです。
冬場のキャンプ場は枯れた芝や枯れ葉、枯れ枝が地面に敷き詰められた状態になるので、焚火シートを併用しないと非常に危険です。
焚火をするならナイフは必須です。ナイフで薪を割る「バトニング」や、薪から焚きつけを作る「フェザースティック」というテクニックを習得すると、ますますキャンプが楽しくなります。
ナイフの代わりに剣鉈(けんなた)や海老鉈(えびなた)を使う人や、斧一本で全てをこなす強者も居ますが、最初は安価なモーラナイフを購入する事をお勧めします。
モーラナイフを選ぶなら、手入れのしやすいステンレス製で、柄まで金属が伸びている「フルタング」のものが頑丈なのでお勧めです。
炭バサミ
小型の焚火台しか使わないなら100均のチープな炭バサミでもOKですが、ファイアグリルのような大型の焚火台を使うなら、それなりに強度のある炭バサミを購入する必要があります。デザインに好みがあるとは思いますが、購入の際には薪を掴む場所が大きいものを選ぶと良いでしょう。
火吹き棒(ファイア・ブラスター)
焚火の勢いが衰えている時に火吹き棒を使うと、一気に火力を上げる事が出来ます。これが無いと、ふとした拍子に火が消えてしまって、一から火を熾さないといけなくなる事があります。管理人は最初に購入したキャプテンスタッグ社の火吹き棒を愛用していますが、100均のギアでも十分です。
綿100%の軍手
軍手はテントやタープの展開や撤収の時、焚火をする時や、ナイフを使う時、料理をする時などに必須です。純綿の軍手は化繊混じりの軍手に比べると割高ですが、熱に強いので溶けて穴が空いたりしません。ホームセンターで販売しているもので十分なので、安全の為に必ず身につけてください。
クッカー
焚火を眺めながら、美味い飯と酒を楽しむのがキャンプの醍醐味です。キャンプ用の調理器具の事をクッカー(英語)やコッヘル(ドイツ語)と言うのですが、日本でクッカーと言えば誰もがソラマメ型の兵式飯盒(へいしき はんごう)を連想する筈です。
飯盒は1800年代の後半に、アルミニウム加工の技術が確立したのとほぼ同時期に海外で生まれました。独特の形状であるソラマメ型になったのは、ベルトでリュックサックにくくりつけるのに都合が良かったからです。
古いタイプの兵式飯盒にはベルトを通して固定する為の金具がありますが、今はそのような使い方をする人が居ないので、ベルト用金具がついていない製品の方が多くなっています。また、海外の飯盒にはハンドル(持ち手)がついているものが多いようです。
日本の西洋化に伴って日本軍にも兵式飯盒が導入されましたが、米食文化の影響から炊飯に特化しています。LOGOS社の兵式飯盒も炊飯に特化していますが、ベルト金具とハンドルがついているのがユニークです。
飯盒炊爨(はんごうすいさん)をすると如何にもキャンプと言う感じがしますが、最近はトランギア社の小型クッカーであるアルミ製のメスティンで炊飯する人が多いようです。
クッカーはアルミ製、ステンレス製、チタン製とありますが、アルミ製のクッカーは熱伝導率が良いので調理や炊飯には向きますが、火傷し易いので食器には向きません。
直火OKの水筒がセットになっている武骨なクッカーも人気があります。こちらはステンレス製なので、それほど熱伝導率が高くなく、食器として使うのに向いています。
管理人が愛用しているのは、DUG社の焚火缶です。アルミ製なので熱伝導が高く軽量ですが、マトリョーシカのように入れ子型になっているのでスタッキング性能が高く、取っ手がついているのでトライポットで吊り下げる事も出来ます。
焚火缶の原型はHOTTON社のビリーコッヘル(通称ビリー缶)にあると言われていますが、本物のビリー缶はヴィンテージ物で、現在はファイアボックス社やゼブラ社のコピー品しか無いそうです。
ウォータージャグ
火を扱う際に決して忘れてはならないのが、水の準備です。水は料理のみならず、消火や火傷を冷やす際にも使うので、多めに用意しておくと安心です。キャンプ用のウォータージャグは色々ありますが、折り畳み可能なものが便利です。
プラスチックやポリ系のウォータージャグは水に臭いがつく事があるので、直火OKのステンレスボトルに水を貯めておくという手もあります。これにお茶などを入れておくと、冷めても直接温めて飲む事も出来ます。
キャンプ地で焚火をしないなら、焚火台や、斧やナイフの類、炭バサミ、火吹き棒(ファイア・ブラスター)は必要ありません。料理はガスバーナーや、固形燃料、アルコール・バーナーでも出来ますし、それも一つのスタイルです。
料理については、キャンプに慣れるまで自宅で下拵えをして、タッパーに詰めて現地に持って行く事をお勧めします。何故なら、慣れないうちは何かとバタバタするので、一つでも調理系のギアを減らしていった方が良いからです。
とりあえずギアを一通り揃えたら、実際にキャンプをして経験を積み、少しづつ自分のスタイルに合ったギアを揃えていきましょう。
因みに、管理人の楽天ROOMアカウントではミニマム・キャンプ用のギアを紹介していますので、よろしければ御利用ください。
ソロキャンプスタートアップ支援
本格的なキャンプには危険がつきものです。薪割り作業でケガをしたり、悪天候でテントが風で飛ばされたり、雨で水没したり、火の不始末で火傷をしたり、知識不足の所為で火事を引き起こしてしまう事もあります。
自然災害のみならず、パリピや酔っ払いが出す騒音や、ギア泥棒などの被害報告もありますし、女性の場合はナンパや痴漢などの被害も想定しなければならず、不安要素を挙げ始めたらキリがありません。
キャンプに興味はあるが一人では不安だという方や、最初は誰かに見てもらいたいと思っている方は、日本単独野営協会様の「ソロキャンプスタートアップ支援」を受ける事をお勧めします。
また、女性の場合はキャンプ場で性被害に遭う危険が高いので、ソロキャンプをする際は本当に注意してください。テントやタープには鍵がかかりませんし、車中泊でも勝手にクルマのドアを開けられて被害に遭ったという話を聞きます。
Twitterを見ていると、たまに「性暴力に遭った」と一言だけ残してアカウントを削除する女性ユーザーを見かけます。SNSで「これから〇〇に行く!」とか「ここをキャンプ地とする!」などのアピールをすると、自ら性犯罪者を呼び込む事になるので絶対にお止めください。
女性専用のキャンプ場やスペースが増えるまでは、信頼できる男性と一緒に行動するか、日本単独野営協会様の支援を受けるようにしてください。