或庵禅師「西から来た胡人(こじん)には、何故ヒゲがないのか。」
老僧「・・・とまあ、これが無門関・第四則、胡人無鬚(こす むしゅ)のあらすじだ。」
小僧「ちょ・・・あらすじって言っても、短過ぎやしませんか?!」
老僧「そうなんだよ。参るよな。」
小僧「いや、もうちょっと説明と言うか・・・。」
老僧「西から来た胡人とは、達磨大師の事だ。そして或庵(わくあん)禅師は、宋の時代の人だという事以外は何も分からん。以上だ。」
小僧「師匠、無茶振りが過ぎますよ!!」
老僧「達磨のヒゲが無いのは何故かと聞かれているのだから、素直に答えれば良いじゃあないか。」
小僧「状況が何も分からないのに、答えられる訳がありませんよ!」
老僧「状況なんか関係ないぞ。何故、ヒゲが無いのかと聞いているだけなんだからな。」
小僧「知りませんよ、そんなの・・・。」
老僧「では、お前は達磨にヒゲがあると思っているのか?」
小僧「いえ、有るか無いかも分かりません!」
老僧「ふむ。不可知論か、シュレディンガーの猫と言った所か。」
小僧「ふざけないでください!!」
老僧「わしも大真面目なんだがなぁ。」
小僧「ってか、答えようが無いですよ、こんなの・・・。」
老僧「達磨は悟りと禅の象徴であり、そしてこれは公案だ。ここまでは分かるな?」
小僧「ええ、それはまあ。」
老僧「達磨をモチーフにした絵は沢山あるし、どれも小太りでヒゲを蓄えている。だが、遥か昔の人だから、実際はどうだったのか誰にも分からん。」
小僧「そうですね。」
老僧「では何故、会った事も無い達磨にヒゲが有るとか、無いとか言えるんだ?」
小僧「あっ!」
老僧「分かったか? 或庵禅師はヒゲの有無ではなく、達磨という過去の存在をどう認識しているのかと聞いていたのだ。」
小僧「師匠、これは運転免許・学科試験ばりの引っかけ問題です!ボクは或庵禅師に抗議します!!」
老僧「そうか? わしは結構面白い公案だと思うがなぁ・・・。」
小僧「面白くないです!酷いです!卑怯です!!」
老僧「そんなに怒るなよ。お前がもう一段階、深く考えれば済む話だったろ。」
小僧「ヒゲ! ヒゲが悪いんです!! 騙されたァ!!!」
老僧「ヒゲに囚われてしまったお前が悪い。以上。」
小僧「ボクは悪くない! 悪いのは・・・うわ~ん!」
老僧「何か楽しそうだから、ほっとこう(笑)」
小僧「ヒゲ・・・ヒゲが・・・ブツブツ。」
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