禅的ミニマリズム・食器編

2021年10月12日禅的ミニマリズム漆器, 粗食

割れない器を求めて

管理人は自他ともに認める食いしん坊です。ミニマリズムに目覚める前は、食器や調理器具に拘りまくって、かなりのお金を使っています。しかし、陶器やガラスの器は割れるのが困りものです。

お気に入りの皿とか、ぐい飲みとか、珍しい中国陶器の麺鉢を誤って割ってしまったり、地震で大切なガラス製品が全滅した時に受けたショックたるや・・・。

割れる事の無いアウトドア用のコッヘルや、プラスチックの器を使うようになった時期もありましたが、料理の見栄えと食器の口当たりが悪過ぎて、どうしても馴染めませんでした。

 

そんなある日、禅僧が「応量器」という入れ子椀型の食器を使っている事を知りました。何でも、応量器は禅僧が托鉢する時にも使う器で、大事な修行道具なのだとか。

応量器に浪漫を感じた私は、曹洞宗の大本山・永平寺が近くにある福井県の鯖江市にすっ飛んで行きました。鯖江は越前漆器の里であり、永平寺御用達の応量器を納入しているからです。

しかし、残念ながら修行中の禅僧(雲水と言う)が使っている本物の応量器は、一般には出回ってないみたいなんですよね・・・。

 

だとすると、市販されている応量器の中から一つ選ぶ事になります。応量器と言えば一生ものの食器ですから、付け焼刃とは言え、私なりに勉強をしました。

漆器もピンキリで、安価な品はカシュー塗装やウレタン塗装のものが多く、いくら長く使っても漆器独特の味わいは出ないみたいです。

デザイン的には個人の漆器工房の製品の方が良い物が多いのですが、受注製作になる為か3~5万円もする高額商品ばかりなので、購入の際にはある種の勢いが必要になります。

 

 

応量器ならぬ「応用器(おうようき)」

色々探し回った挙句、最終的に私が購入したのは、山中漆器の「応用器(おうようき)」でした。この商品を選んだ理由は、価格の安さと、手に持った時の軽さです。最初は本物っぽい漆黒の応量器を買いたかったのですが、私は禅僧では無いので何処かで差別化したかったというのもあります。

実際に使ってみてどうだったかと言うと、これはもう満足の一言です。応用器は応量器と同じ六客一組の入れ子椀で、作りもほぼ同じです。頭鉢(ずはつ)に相当する一番大きな鉢は見た目よりも容量が大きいので、使い勝手は非常に良いです。箱膳 応量器 応用器

 

 

底の部分は、こうなっています。鉢自体が肉厚な作りになっているので、炊きたての御飯をよそっても熱くて持てないという事はありません。ただ、うどんなどを汁ごとよそうと、ちょっと熱くなりますね。箱膳 応量器 応用器

 

 

これは二番目の鉢です。主に味噌汁や碗物をよそいます。薄くて軽いので、使いやすいです。二枚目の鉢から底に高台がつきます。三枚目の器をひっくり返して乗せれば、椀物の蓋にする事も出来ます。箱膳 応量器 応用器 

 

 

一番小さいものは、鉢というより皿というべき形状になります。私はこれに一番大きい頭鉢を乗せています。そのようにして使えば、熱い食べ物をよそった鉢の熱がテーブルに直接伝わりません。

漆器のスベスベとした手触りは良いものですし、器に口をつけた時の感覚も柔らかいです。洗ってもすぐに乾きますし、値段の割には高級感もあります。何より、不注意から落としても割れたりしないのが良い所です。箱膳 応量器 応用器 

 

 

応量器と箱膳の組み合わせ

応用器を購入してから、どうすればこの器を最も活用できるのかを考えました。因みに、禅宗では食事の際に飯台(はんだい)というテーブルを使ったり、布巾(ふきん)と漆を塗った紙を広げて、その上に応量器を置いて食事をします。

私は布巾と漆紙の代わりに手拭いを敷いて食事をした事がありますが、テーブルとは違って高さが無いので食べづらくて仕方が無いし、箸で掴み損ねた食べ物で手拭いを汚してしまう事もありました。

手拭いをお盆に変えると、汚れの問題に関しては多少マシになりましたが、今度は応用器の6客が全て乗らないという新たな問題が出てきてしまいました。

 

その後も色々と研究した結果、江戸時代から昭和初期まで一般家庭で使われていた箱膳(はこぜん)なるものと出会いました。箱膳とはその名の通り箱状の御膳の事で、昔は家族が銘々の箱膳(銘々膳)を持ち、その中に自分が使う食器を収納していたそうです。

箱膳があれば、やたらと場所を取るテーブルや食器棚が要らなくなるので部屋を広く使えますし、食べ残したご飯をそのまま箱膳の中に入れて保管する事も出来ます。また、箱膳の蓋はお盆にもなるので、食後に食器をそのままキッチンに運ぶ事も出来ます。

本当に、何でこんなに良い物が廃れてしまったのかが分からないくらい便利です。箱膳 応量器 応用器

 

 

これは我が家のいつもの朝食です。箱膳+応量器のおかげで、粗食ながらも雰囲気があり、満足度が高い食事になっています。漆器の器を使い始めると、陶器の器がやたら重く、冷たく感じるようになります。

 

 

晩酌の一例です。佃煮と板ワサでポン酒をキュッとやるだけの写真ですが、箱膳+応用器のおかげで高級感が出ています。

 

 

一汁一菜の食事もこの通りです。頭鉢は意外と容量が大きいので、丼(どんぶり)としても使えます。

 

 

応用器はAmazon様でのみ取り扱っています。受注生産なので商品が到着するまで約2ヶ月ほどかかりますが、一生ものの器を入手する為の手間と考えて、楽しみに待ちましょう。

 

 

市販されている箱膳も何種類かあるのですが、やや大き目のサイズで、角にぶつけても怪我をしにくい隅切りの箱膳をお勧めします。

 

 

漆器製の重ね椀は、応量器だけではありません。因みに、私は信玄弁当箱(しんげんべんとうばこ)と呼ばれる三つ重ね(三客)の弁当箱も持っています。これは明治・大正時代までは割とメジャーな弁当箱だったのですが、今では茶道具や骨董品という扱いになっています。

軽くて密閉度の高いプラスチック製やアルマイト製のランチボックスの流行によって、漆器製の弁当箱を見かける事は少なくなりました。私はこの信玄弁当箱を京都の老舗「漆器の井助」で購入したのですが、残念ながら既に生産中止となっていて、これが最後の一つだと言われました。

 

 

この信玄弁当箱は全部で4客です。約2万円とお良い値段でしたが、大事に使えば100年は持つという話です。

 

 

基本的には弁当箱ですが日用使いも可能です。実際に使ってみるとこんな感じです。御飯をぎゅうぎゅうに詰めれば約一合入りますし、キチンと蓋も閉まります。

 

 

箱膳の中に、応量器と、信玄弁当と、寿司屋の湯飲みを入れてみました。これら全ては一生ものの器であり、私が死ぬまで大事に使う器です。

 

 

一生ものの器と言っても、応用器や、箱膳や、信玄弁当箱は高額商品です。漆器に興味はあるけど、なかなか手を出せないという方は、手始めに安価な漆器から購入する事をお勧めします。下記の信玄弁当箱は間違いなく本物の漆器ですが、お値段は約3400円と控えめですし、日用使いも出来る逸品です。

 

 

漆器製の弁当箱と言えば、やはり重箱(じゅうばこ)は外せません。御存知のように、重箱はおせち料理やお花見などの「ハレの日」に欠かせない道具であり、季節感のある伝統的な行楽のお供です。

漆器の重箱は保湿性が高いので、御飯が冷めても硬くなりにくいというメリットがありますし、急な来客があっても物相飯(もっそうめし)というワンプレートのスタイルでお出しする事が出来ます。

因みに物相飯とは、禅宗の僧堂で提供されていた一膳盛り切り型の精進料理の事を言います。それが茶懐石に取り入れられて、型抜きした御飯を盛り付ける事や、御飯用の型抜き自体を物相(もっそう)と呼ぶようになりました。写真はサツマイモと押し麦の物相飯です。

 

 

禅ではなく茶道の話になりますが、昔は懐石料理で焼物料理を出す時に、引重(ひきじゅう)と呼ばれる二段の重箱を使っていました。用法としては、上の重に香の物、下の重には焼物を盛り付けて、みんなで取り分けたりしたそうです。

それに倣って、私の家では料理が箱膳+応量器のセットに収まりきらない場合は、サブの器として重箱を使っています。重箱に焼き魚や刺身を盛り付けたり、仕切りを使って総菜を取り分けたりするのですが、これはこれで見栄えの良いものですよ。

 

 

重箱は食器のみならず、お菓子入れにもなりますし、高級感のある和風の小物入れとして使う事も出来ます。因みに、私はメガネなどの小物を一時的に置く為の場所として、重箱を使う事があります。

 

 

私も愛用しているこの重箱は、三段とも取り外し可能な十字型の仕切りがついています。色は派手過ぎず、高さも隅切りの箱膳とマッチしています。もちろん本物の漆器ですし、お値段も控えめです。

 

 

最近はエコの観点から漆器が見直されていて、ミニマリストの間でも漆器を使う人が増えているようです。箱膳&応量器のスタイルが流行るかどうかは分かりませんが、重箱に関しては雑誌で特集が組まれるほどのムーブメントが来ているという話があります。

良い品だけを選んで購入し、それを日用品として大事に使うのは時代の流れです。また、本当に良い物には色々な使い道があるものですし、一時的に廃れたとしても必ず復活します。どうせ購入するなら、そういった本物に的を絞った方が良いと思います。

 

2021年10月12日禅的ミニマリズム漆器, 粗食

Posted by 清濁 思龍