坐禅と丹田呼吸法

2022年1月14日坐禅と見道(けんどう)

調身

坐禅をする際は、姿勢を整える為の座具(ざぐ)が必要不可欠です。仏教史上最古の座具は「尼師壇(にしだん)」と言う長方形の布で、僧侶が私有する事を許された比丘六物(びくろくもつ)の一つに数えられています。

南伝・上座部仏教の僧侶達は、今でも尼師壇を使っているようですが、中国や日本では礼拝の際にしか使われなくなりました。これは中国仏教における尼師壇の用法を説明している貴重な動画です。

 

 

釈迦世尊の没後、28代目に当たるペルシャ生まれのインド人である達磨大師が中国で禅宗を開き、日本に伝わります。初期の中国禅宗では、蒲(がま)の葉を円く編んだものを蒲団(ふとん)と呼び、これを坐禅の時に用いていたようです。

下の写真は、中国禅を今に伝える黄檗宗・萬福寺で撮影した円座(えんざ)です。恐らく当時の蒲団は、これに近いものだったのではないでしょうか。

 

 

日本に禅が伝わると、坐禅用の道具である蒲団と、寝具の布団(ふとん)や敷物の座布団(ざぶとん)との混同が起きました。その為かどうかは分かりませんが、曹洞宗では蒲団を座蒲(ざふ)と呼んでいます。

 

 

座蒲は曹洞宗の二大本山の売店で販売しています。下は福井県・永平寺の売店の写真です。管理人はここで参拝の記念に、一尺のビロード座蒲(茶)を購入しました。

 

 

こちらは神奈川県・總持寺の売店の写真です。品揃えは永平寺の方が充実していました。残念ながら石川県・總持寺祖院や、東京の永平寺別院・長谷寺(ちょうこくじ)では座蒲を販売していません。

 

 

座蒲はネットでも購入できます。禅寺で使用している座蒲は綿100%ですが、自宅で使う座蒲はビロード(別珍)布地で中身はパンヤ(カポック種の天然綿)、サイズは一尺(約30cm)の物を選びましょう。

 

 

管理人が永平寺で購入した一尺ビロード座蒲に近い座蒲はこちらになります。色は茶色ですが、坐り心地は問題ありません。使用後は自重で潰れて平べったくなりますので、横の部分を押して丸く形を整えます。親指だけで押すのが正式な作法のようです。

 

 

臨済宗も江戸時代までは円形の蒲団を使っていたようですが、いつ頃からか普通の座布団の上に尻敷き用の小さな座布団を置いたり、一畳近い大きさがある単布団(たんぶとん)を折りたたんで使うようになりました。

坐禅をする際の単布団の使い方ですが、基本的には長座布団と、正方形の座布団と、枕型の座布団の3つを組み合わせて使います。これに坐った時の安定感は最高で、ずっと坐っていたくなるほどです。

 

 

坐禅をする度に三つの単布団を組み合わせるのは面倒ですし、その作業中に結構な量の埃が舞ったりもするので、普段は長座布団だけを折りたたんで坐禅をしています。

 

 

単布団に坐って食事をしたり、寝具や、ヨガマットとして使う事もあるので、インド綿製のマルチ・クロスを被せています。

 

 

単布団(たんぶとん)は楽天で取り扱っているこの商品のみ、ネットで購入する事が出来ます。フローリングの部屋でも敷布団として使えますし、アウトドアのお供として車中泊やテント泊でマット代わりにする事も出来ます。

管理人は椅子とテーブルの代わりに、単布団と箱膳を使うようになりましたが、そのおかげで部屋がとても広くなりました。寝る時は単布団を広げて敷布団にします。

因みに、臨済宗の雲水は柏布団(かしわぶとん)と呼ばれる一枚二つ折りの布団で寝起きしていると聞きました。


ツムギ (紺) 臨済宗 ・ 座禅座布団 3枚セット (単布団)
 


ツムギ (黒) 臨済宗 ・ 座禅座布団 3枚セット (単布団)
 

 

 

座具を自作する場合は、ホームセンターなどで販売している高さ10cm前後の足踏み台をベースにすると具合が良いです。足踏み台の上にホームセンターで売っている「ぴたパネル」を乗せれば、座り心地が硬めの座具になります。

 

 

座具を準備したら、ゆったりとした服装に着替えて、心落ち着く静かな場所で坐禅をしましょう。床が畳ならそのまま、フローリングなら普通の座布団などを用意してください。燃焼時間が四十分くらいの線香かインセンスを用意出来れば、なお良しです。

全ての準備が整ったら、座蒲などの上に胡座(あぐら)で座ります。そして右足を左足の腿の付け根に乗せて、左足を右足の腿の付け根に乗せます。この坐り方を結跏趺坐と言います。

結跏趺坐には二種類あり、左足が上になるのは降魔坐という修行者の座法で、右足が上になるのは吉祥坐という如来の座法です。坐禅をする時は、なるべく降魔坐で座るようにしてください。下の「釈迦苦行像」は、吉祥坐の見本です。

 

 

結跏趺坐で座れない場合は、片足だけを乗せる半跏趺坐で座りましょう。この場合も左足が上になります。半跏趺坐で座れない場合は、座具を自作して座高を調整するか、胡座(あぐら)か正座で座ってください。膝が悪い人は椅子坐禅という方法もあります。

坐り方が決まったら、足の上に右手の平を上に向けて乗せて、その上に左手の甲を乗せ、両手の親指の腹がつくかつかないかのギリギリまで近づて「摩尼宝珠(まにほうじゅ・如意宝珠とも)」を形作ります。摩尼宝珠とは、社寺の橋の欄干などで見られるものです。

組んだ手は臍下丹田の前に置き、上半身の力を抜いて手首を伸ばします。肘は体から少しだけ離し、親指の先を軽く合わせます。この手の形(印契・いんげい)を「法界定印(ほっかいじょういん)」と言います。

 

 

手足の形が決まったら、身体を前後左右に揺すってバランスを取ります。顔は正面、目は半眼にして一メートルほど先に視点を置き、全体をぼんやりと見ます(八方目・はっぽうもく)。上半身は自然に伸ばし、アゴを引きます。舌は上顎に軽くつけ、歯は軽く噛み合わせ、口腔内に空間が出来ないようにします。

そして「仙骨」と呼ばれている脊椎と腸骨(腰骨)を繋ぐ部位の骨を前方に倒して、腰を反らせます。その際、胸まで反らさないように注意してください。立っている時の自然な背骨の湾曲を思い出して、頭部の重量を仙骨で支えるようにすると上手く行きます。猫背では坐禅になりません。

結跏趺坐で姿勢が正しく決まると、仙骨と両膝の三ヶ所で体を支える形になり、とても安定します。他の坐法だとこうはならず、少々不安定になるので注意してください。

 

 

拙い写真&モデルがオッサンで申し訳ないのですが、坐禅中の姿勢を上から撮影してみました。左はただ背筋を伸ばしただけの姿勢ですが、右は丹田をキメています。仙骨を反らして坐っているので、頭部の位置が違います。

肩は後ろに下げぎみにして胸を開きます。その際、肩と腕に力が入らないようにする事と、背筋をのけ反らせたり猫背にならないよう気を付けます。頭頂部に何かを乗せている状態をイメージすると、上手く坐れます。

 

 

臍下丹田に力を入れようとして、腹圧だけをかけ過ぎると胃下垂になりますし、吸気を臍下丹田に落とす角度がズレても同様の症状が出ます。吸気を真下に落とす事と、真下に落とした吸気を腸骨(腰骨)の中心で受け止める事を意識してください。

また、顔の筋肉や喉が緊張していると、何故か臍下丹田に力が入らなくなりますし、仙骨を倒そうとし過ぎると胸が反り、それを警戒し過ぎると猫背になります。上体は地面に対して垂直で、絶対柔軟が基本です。

膝、仙骨、丹田でZ型の土台を作り、そこに上体を乗せて、尻で全体を支えるようにすると上手く行きます。

 

 

調息

坐禅中の呼吸は、基本的に腹式呼吸で行います。ゆっくりと臍下丹田で息を吸うかのように下腹部を膨らませ、ゆっくりと「蒸すように」息を吐き切りながら下腹部をへこませます。

吸気で下腹部をへこませて呼気で下腹部を膨らませる逆腹式呼吸という呼吸法や、呼気吸気の両方で臍下丹田に圧をかけ続ける持続腹圧呼吸という呼吸法もあります。どちらも腹式呼吸と比べると不自然な呼吸法なので、内臓に余計な圧力をかけないように気を付けながら実践してください。

また、吸気の際に肋骨を横に広げる胸式呼吸(動物呼吸)もあります。これを逆腹式呼吸の吸気や、持続腹圧呼吸の際に行うと腹圧をかけ易くなります。

 

 

調心

調心とは、雑念を払い、心の乱れを調える事を言います。しかし、正しい姿勢で臍下丹田に圧を加えれば、自ずと身心と呼吸が整うものです。仏教古来の数息観を試みても良いのですが、臍下丹田に圧を加えながら数息観を行おうとすると、どちらも上手く行かなくなるものです。

いきなり無我の境地を求めるのではなく、まずはしっかりと臍下丹田に圧がかかる姿勢や、何処にも息がつかえず、力まず、楽に呼吸の出来る姿勢を求めて、ゆったりと、全てを解きほぐす気持ちで座りましょう。

 

 

曹洞禅の動画

文章と写真だけではピンと来ないと思うので、曹洞宗の坐禅のやり方を説明しているYOUTUBEの動画を貼っておきます。

 

 

公案について

昔は公案に参じて悟りを開こうとする看話禅(かんなぜん)と、公案を用いず只管(ひたすら)に坐り続ける黙照禅(もくしょうぜん)に分かれていましたが、現代ではそういう区別はしていないようです。

因みに管理人は中国臨済宗・松源派の先祖返りを自称しており、古の看話禅を復興させようとしています。その第一歩として、公案を題材にしたショート・ショート・ストーリー(SS)の記事を書いてみました。

「無」や「隻手」に成り切る公案禅とはかなり違いますが、こういう公案解を他所様で見る事はまず無い筈なので、よろしければ御一読ください。

無門関(むもんかん)について

 

 

ここまでお読みいただきましたら、初伝・多面的観察の記事にお進みください。

初伝・多面的観察

 

2022年1月14日坐禅と見道(けんどう)

Posted by 清濁 思龍