心身を鍛える丹田操剣法

2021年10月6日各種メソッド

丹田操剣法とは何か?

丹田操剣法は、大小の木刀を振る事で全身の筋力と臍下丹田を同時に鍛える、やや武道的なトレーニング法です。丹田練磨を重視しているので運動量は控えめですし、憶える動作もそう多くはないので、武道やスポーツが苦手な人に向いています。

木刀を振る事で適度に全身の筋肉が鍛えられて体力と敏捷さが向上しますし、筋肉の破壊と再生によって成長ホルモンが分泌されるので気分が爽快になります。男性の場合は「武器を振るう」という行為によってテストステロンも分泌されるので、男性らしい性格が形成されます。(個人差あり)

筋肉に高い負荷をかけるウェイト・トレーニングとは違って、丹田操剣法を行ってもムキムキのゴリマッチョにはなりません。なので、あまり腕や足腰に筋肉をつけたくない女性にもお勧めです。

 

丹田操剣法の鍛錬で使う木刀には特に指定は無いので、剣道用の木刀や、鹿島神宮で授与していただける御神刀でも構いません。

木刀の代わりになるものを自作する場合は、ホームセンターで販売している直径2・5cmの丸棒を、長さ1mと5~60cmにカットしたものを使うと良いでしょう。値段で言うならこれが一番安いですし、長さを調整すれば自宅の室内でも振り回せるようになります。

軽すぎて武器という感じがしないのと、木肌の色合いが地味なのが欠点ですが、ガスコンロで炙って焼き色を付け、目の細かい紙ヤスリと椿油で仕上げれば、かなり改善します。ニスや塗料を塗るのは面倒な上に高くつくので、お勧めしません。

 

因みに、ネットで買える木刀は下記リンク先の大小セットが一番安いようです。

 

 

木刀か、木刀の代わりになるものを準備したら、丹田操剣法の動画を御覧ください。ただし、モデルは中年のオッサンです。お目汚し失礼。

 

 

小太刀での丹田操剣法

小太刀での丹田操剣法の注意点を、動画キャプチャーを使って説明します。まず右手で片手剣を持ち、左手の甲を背骨と腰骨の間にある「仙骨」に当てて自然に立ちます。次に右足を一歩踏み出して、左足を45°の角度に開いて体重をかけます。重心は踵にあります。

その姿勢を維持したまま、体の内側を回すように片手剣を振ります。この時は人差し指で輪を作るような気持ちで剣を持ちます。慣れてきたら、敵の攻撃を受け流すイメージを持ちながら行うようにしてください。

片手武器は軽くて扱いやすいのが長所であり、身体にかかる負荷が軽いので、準備運動代わりに行うと良いでしょう。ですが、丹田操剣法の肝である「丹田の感覚」を掴み難いという欠点もあります。

 

 

背筋を伸ばして左手の甲を仙骨に当てたまま片手剣を振り下ろすと、大体この位置で剣が止まって、右足に体重が乗ります。その際、踏み出した右足が地面に垂直になるようにすると、下腹に力が入ります。体重は踵にかけます。インパクトの瞬間は小指で軽く柄を握り、雑巾を絞るように手首を返して、手のひらで剣の勢いと重さを支えるようにします。上手く行くと剣がブレず、ピタリと止まります。

正確には、振り回すと言うより、剣先で重い物を押すような感じです。立木などを打つと分るのですが、手先だけで剣を振ると、剣が当たった時に跳ね返ってしまいます。剣で敵を断ち切ろうとすると腕だけでは力が足らず、胸筋、腹筋、背中を使って押し切るようにしないと威力が出ないのです。

 

 

剣の内回しを正面から。大体この角度で受け流すイメージです。片手剣で敵の攻撃を受け止めるのは無理なので、軽く当てて方向をずらす感じで行ってください。

 

 

内回しの時は問題になりませんが、外回しの時は人差し指と親指で輪を作るように柄を握らないと、受け流せる角度になりません。

 

 

両手剣の丹田操剣法

次は両手剣の注意点です。まず全身を脱力して両手(小指だけ締める)で剣の柄を持ち、両足を外ハの字(がに股)に開きます。開く角度は90度、広さは肩幅より少し広めにして、体重は踵に落とします。

次に、膝を自然に伸ばしたまま、剣先が背中か尾てい骨につくように、ゆっくり大きく振りかぶります。

 

 

振りかぶったら、脇を締めつつ腕を伸ばし、雑巾を絞るように手首を絞りながら剣を振ります。振り終わった時、両手首は絞られて一直線上にあり、高さは胸より少し低いくらいの位置で緊張した大胸筋につかえて止まります。腰は反らしたままです。

 

 

両手剣での内回しから、外回しの受け流しに繋ぐのは、足の運び方が難しいです。剣は円運動で振り回すのではなく、柄尻をかち上げるような感じで行うと動作が速くなります。剣で剣を防ぐのではなく、剣を軽く当てて方向を変える感じで攻撃を受けます。

 

 

剣を振るという動作は、想像以上に腕の筋肉や関節にダメージを与えるものなので、始めたばかりの時は必ずゆっくりと動作を行ってください。ゆっくりやっても最初は20回も振れれば上等ですし、キチンと出来ていたら翌日は全身が筋肉痛になります。

逆に、普段運動をしていないのに筋肉痛にならなかった場合は、何処かしら上手く出来ていないと言う事です。

何日か行って、自分の筋力の強さを把握出来たら、少しづつ早く振るようにしていってください。重要なポイントは、体重を地面と垂直に落とす事と、そのショックを膝で吸収する事です。このようにして素振りを続けていくと、少しづつ丹田が鍛えられていきます。

 

 

丹田操剣法と不動知神妙録

丹田操剣法は剣術ではなく丹田練磨の行法ですが、その延長線上にあるものは剣術と同じ無念無想、無心の境地です。柳生新陰流の柳生但馬守宗矩(やぎゅう たじまのかみ むねのり)と交流があった沢庵宗彭(たくあん そうほう)禅師は、その境地を不動知(ふどう ち)と呼びました。

不動智とは、心を殺して石や木のような無機物的な存在になるのではなく、対戦相手などの外部からの刺激に動揺したり、内なる煩悩に囚われたりせず、自由自在に動く事であるそうです。そして沢庵禅師曰く、不動明王とは囚われのない心の象徴なのだとか。

沢庵禅師が柳生宗矩に宛てて書いた不動智神妙録(ふどうち しんみょう ろく)という書簡には、禅の見地から剣の道が説かれています。後に柳生宗矩は剣禅一如(けん ぜん いちにょ)と言う思想を説くようになりますが、これには沢庵禅師からの影響があったと考えて間違いないでしょう。

 

我々日本人の精神性の根底には常に「刀」の存在がありますし、それは人としての正しい生き方を切り拓く為に必要な力の象徴でもあります。その象徴としての「刀」を自他を活かす為に用いるか、ただの人斬り包丁として振り回すかで、その人の価値が決まります。

今の時代に日本刀同士で切り結ぶ事などありませんが、心身の鍛錬法として見るなら、剣術は後世に伝えるだけの価値がある素晴らしい文化だと思います。

不動智神妙録の原本は現存せず写本が残るのみですが、今でも関連書籍や全集なら読む事が出来ます。昔の本ばかりなので少々読み辛いのが欠点ですが、国立国会図書館デジタルコレクションでもいくつか読める本があるので、剣禅一如や不動智神妙録で検索してみてください。

 

 

お勧め書籍と動画の紹介

もし剣術に興味が出てきたなら、剣術研究者であり劇画作家の「とみ新蔵」先生が主催する実戦剣術会の動画や、とみ先生の著作「剣術抄」を読んでみてください。目から鱗が落ちること請け合いです。

 

 

どうしても丹田の感覚が掴めない時は、肥田式強健術の本を読んでみましょう。これに関してはムーブックスの書籍が一番出来が良く、安価で、入手し易いです。


 

 

肥田式強健術の創始者・肥田春充の動画です。確かこのビデオは何万円もした筈です(汗)

 

 

丹田が鍛えられてきた実感があるなら、試しに坐禅を組んでみましょう。本当に丹田が鍛えられていたら、坐禅の際に思考が止まり、無念無想の境地になります。上手く行けば沢庵禅師が言う「不動知」を会得する事が出来るかも知れません。

坐禅と丹田呼吸法

 

2021年10月6日各種メソッド

Posted by 清濁 思龍