坐禅と脳疲労
止まらない「脳内の独り言」
現代人の脳は勉強や仕事で酷使されており、その上、各種メディアやネット上に氾濫する過剰な情報を処理し続けている為、慢性的な脳疲労(脳過労)の状態にあります。脳疲労の状態が続くと、常に頭がボーッとして物事を深く考えられなくなったり、自律神経が乱れて心身の不調を招いたりします。
疲れているなら休ませれば良い話ですが、脳疲労は「情報中毒」とセットになっている場合が多く、その場合は休息よりも、情報収集によって得られる快楽を選んでしまいます。例えば、スマフォ依存やゲーム依存は情報中毒の典型的な症状であり、かなり危険なサインです。
更に脳疲労の症状が進行すると、雑念の暴走により日中はおろか、睡眠中でも脳を休ませる事が出来なくなくなります。四六時中、絶え間なく頭の中で雑念が渦巻いていて、しかもそれを全く制御できず自力では止められなくなると、遅かれ早かれ精神を病んでしまいます。
私自身、本格的に坐禅を始めるまでは常に脳が疲労していて、いつも頭がボーッとしているか、頭の中がゴチャゴチャで、これっぽっちも難しい事を考えられない状態でした。
約一年ほど坐禅修行を続けたら、いくらか脳疲労は軽減しました。でも、まだ頭の中がうるさかったので、「1/fゆらぎ(エフぶんのいち ゆらぎ)」を含む自然環境の音や、ヒーリング用の音楽を聴いてみました。
その中でも最も気に入ったのが、下の動画です。私はシンギングボウルと焚火の音の組み合わせが好きなようで、今でも度々この動画を利用させていただいています。
古代ヨーガのトラタカ冥想
仏教寺院では、釈迦世尊が開発したと言われる数息観(すそくかん)という冥想法を教えている所があります。数息観は呼吸に意識を集中して、ゆっくりと呼吸の数を数えるというものですが、仏教では基本にして最重要の冥想法と言われています。
昔は僧侶が出家すると、約一年ほど「無言の行」をやらされて、それが済むまでは教義や冥想法を教えてもらえなかったと言いますが、ひょっとするとそれは「脳内の独り言」を止める為の処置だったのではないでしょうか。
ですが、現代人に「無言の行」など出来る訳が無いので、別の方法を考えなければいけません。それで約二年ほど自分自身を実験台にして様々な行法やテクニックを試してみたのですが、最終的に古代ヨーガの「トラタカ冥想」こそがベストだと考えるようになりました。
トラタカ(Trataka)とはサンスクリット語で「凝視する」という意味で、具体的なやり方としては、暗い部屋でロウソクに火を灯し、只管(ひたすら)その炎を見つめ続けるというものです。
まず、下の動画で20分ほどトラタカ冥想をしてみてください。禅僧のように結跏趺坐を組んでも良いですし、椅子に座ってリラックスした姿勢で見ていても構いません。目線はロウソクと同じ高さにして、なるべく眼球を動かさないようにします。
※全画面HD推奨です。開始直後と終了時に鈴(りん)が鳴るので、音量を調整してください。
トラタカ冥想・改
古代ヨーガのトラタカ冥想を実践するのが難しいという方は、その前段階となる「トラタカ冥想・改」をお試しください。
まず、就寝の一時間前くらいに電灯を消して、ロウソクの明かりだけで過ごす習慣を身に付けましょう。この場合はロウソクの炎を見つめ続ける必要はないので、TVや動画を見たり、音楽を聴くなどして自由に過ごしてください。
就寝の一時間前に消灯する習慣を身に付けたら、次にTVや動画や音楽などを止めてみましょう。そしてベッドや布団やハンモックに横たわりながら、ただボーッとロウソクの炎を眺めるだけの時間を作ってみましょう。眠くなったら寝てしまっても構いませんが、その前に炎を吹き消す事だけは忘れずに。
何もせずボーッとロウソクの炎を眺める事が出来るようになったら、少しづつで良いので、電灯や家電を使わずにロウソクの明かりだけで過ごす時間を増やしていってください。理想は21時消灯ですが、流石にそれは現代人には難しいと思うので、可能な限りで結構です。
そして、たまにで良いので、電灯や家電を一切使わず、ロウソクの明かりだけで一晩を過ごしてみてください。何度も実践していくうちに、電灯というものがどれだけ便利かという事と、電灯のせいでどれだけ生活のリズムが乱されているかを実感する筈です。
部屋の光量を落とせばそれだけ見える範囲が狭まりますし、音が少なくなればそれだけ情報処理も楽になります。誰でも心身が疲弊すると暗くて静かな所に行きたくなりますが、それは脳が過剰なストレスを減らす為に、無意識のうちに情報を遮断しようとするからです。
ロウソクの明かりに慣れるにつれて、脳疲労も軽減していきます。薄暗い部屋は刺激や情報量が少ないので、脳を休める事に繋がるのです。キチンと脳を休められていれば、苦労せずに古代ヨーガのトラタカ冥想も出来るようになります。
自宅でトラタカ冥想を実践するのも結構ですが、キャンプ場で焚火をするのも一興です。とは言え、キャンプは意外と敷居が高いので、段階を踏んでチャレンジする事をお勧めします。
仕事や勉強で忙しくてキャンプに行けない方は、この動画をご活用ください。