修行者の食事情
仏教発祥の地であるインドのサドゥー(ヨーガ行者)は、主に全粒粉のパンとミルク入りの紅茶か、米と野菜と豆を適当に煮た粥(キチュリー)を食べています。恐らく、釈迦世尊も出家したばかりの頃は、似たようなものを食べていた筈です。
東南アジアやスリランカなどに根付いている南伝・上座部仏教の僧侶は、全ての食を托鉢(たくはつ)で賄い、施された食べ物は肉でも何でも残さず食べます。食事は一日一食だけで、料理を含む家事の類は一切せず、ひたすら冥想と慈悲行に励みます。
中国大陸経由の北伝・大乗仏教の僧侶は、作務(さむ)をしたり、典座(てんぞ)が料理を作ったりします。食事は一日三食の精進料理ですが、戒律で正午から食事を摂らない事になっているので、夕飯を薬石(やくせき)と言い換えています。
因みに、俳優の北村一輝が嵩山・少林寺に潜入取材した際に、陶器の茶碗に炒めた野菜を盛り付けて、その上にモヤシ炒めを詰めた饅頭(マントウ)を置いただけの粗末な食事を、腹いっぱい詰め込む武僧の姿がありました。
潜入!少林寺 知られざる教練洞窟 中国格闘技の奥義に挑む!:BSテレ東
6月12日(日)夜8:時~9時55分放送 1500年続く格闘技の聖地、少林武術の総本山である中国河南省の嵩山少林寺。禅僧たちの修行現場に、初めて海外のカメラが入る!
日本の禅僧は、朝は粥と漬物、昼は一膳飯、夕に薬石といった粗食がメインですが、料理の質は極めて高く、最低の食材で最高の味を生み出す事で知られています。中国の禅僧は味に興味が無く、日本の禅僧が味にうるさいという対比の構図は面白いですね。
しかし、中国臨済宗の正統法嗣であり、黄檗宗(おうばくしゅう)の宗祖でもある隠元隆琦(いんげん りゅうき)禅師は、大陸から普茶料理(ふちゃりょうり)と呼ばれる来客用のおもてなし料理を伝えています。
中国禅宗に食文化が無いのではなく、普段は食に気を使わないという事なのかも知れません。
普茶料理|食す|黄檗山萬福寺 ‐京都府宇治市
黄檗宗大本山「萬福寺」の公式サイトです。京都府宇治市にある日本三禅宗の一つ黄檗宗の大本山の寺院「萬福寺」。日本では他に例が無い中国明朝様式を取り入れた禅宗伽藍建築と数々の文化財。萬福寺で体験できる禅体験や普茶料理についてもご案内しております...
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